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オールオン4と歯周病

ブログ

2025.06.29

多くの歯を失ってしまい、食事がしにくい、人前で口を開けるのがためらわれる、といったお悩みを抱えている方にとって、オールオン4All-on-4)は非常に魅力的な治療選択肢の一つです。これは、わずか4本のインプラントで片顎全ての歯を支えることができる画期的な方法で、短期間で安定した噛み心地と美しい見た目を取り戻せるとされています。しかし、「歯周病があるからオールオン4はできない」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。歯周病は日本の成人の約8割がかかっていると言われる病気であり、多くの患者様がこの疑問を抱えていることと思います。この記事では、オールオン4と歯周病の関係に焦点を当て、歯周病がオールオン4治療にどのような影響を与えるのか、そして歯周病をお持ちの方がオールオン4治療を受けるための注意点や、治療を長持ちさせるためのポイントについてお伝えさせていただきます。

歯周病だとオールオン4治療ができないと言われている理由

歯周病は、歯を支える歯茎や骨に炎症が起きる病気であり、日本の成人にとって一般的な口腔疾患です。この歯周病が進行すると、歯の周りの骨が溶けていき、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。オールオン4治療は、わずか4本のインプラントで全ての歯を支える画期的な方法ですが、この治療の成功には、インプラントを埋め込む顎の骨が健康で十分な量があることが不可欠です。

歯周病が進行している方の顎の骨は、細菌感染によって既に溶けてしまっていることが多く、インプラントをしっかりと固定するための土台が不足している状態にあります。インプラントは骨と直接結合することで安定するため、骨の量が不足していたり、骨質が悪かったりすると、インプラントが結合しにくくなったり、結合しても安定性が損なわれたりするリスクが高まります。

また、歯周病の原因菌が口腔内に多く存在している場合、インプラント治療後にインプラント周囲炎という、インプラント版の歯周病を発症するリスクも高まります。インプラント周囲炎が進行すると、インプラント周囲の骨が溶け、最悪の場合、せっかく埋入したインプラントが抜け落ちてしまう可能性もあります。

このような理由から、重度の歯周病を抱えている方は、そのままの状態ではオールオン4治療が困難である、あるいは治療後の成功率が著しく低下すると言われています。しかし、これは「歯周病だから絶対にオールオン4ができない」という意味ではありません。適切な治療と管理を行うことで、オールオン4治療を受けられる可能性は十分にあります。

歯周病患者さんがオールオン4治療を受けるには

歯周病が進行しているためにオールオン4治療が難しいと言われたとしても、決して治療を諦める必要はありません。適切な準備と治療計画を立てることで、歯周病をお持ちの方でもオールオン4治療を受けられる可能性は十分にあります。

最も重要なステップは、まず歯周病そのものを徹底的に治療し、口腔内の環境を改善することです。

  1. 歯周病の治療
    • 基本的な歯周病治療: 歯周病の原因となるプラークや歯石を徹底的に除去するスケーリングやルートプレーニングを行います。これにより、歯茎の炎症を抑え、歯周病の進行を食い止めます。
    • 進行した歯周病への対応: 重度の歯周病で骨の破壊が進んでいる場合は、歯周外科手術が必要になることもあります。これは、歯茎を切開して深部の感染組織を除去したり、骨の再生を促す処置(GTR法、GBR法など)を行ったりするものです。
    • 抜歯: 残すことが難しい歯や、歯周病が非常に進行して周囲の骨に悪影響を与えている歯は、抜歯が必要になります。オールオン4は、基本的に残存歯を全て抜歯してから行う治療ですが、感染源となる歯を確実に除去することが重要です。
  2. 骨の状態の評価と改善
    • 歯周病の治療と並行して、インプラントを埋め込む顎の骨の状態を詳細に評価します。CTスキャンなどの精密検査により、骨の量や質、神経や血管の位置などを確認します。
    • もし骨の量が不足している場合は、**骨造成術(骨を増やす手術)**を検討します。これは、ご自身の骨や人工骨などを移植して、インプラントを安全に埋め込むのに十分な骨の厚みや高さを確保する治療です。オールオン4では、傾斜埋入などで骨の少ない部分を避ける工夫も行われますが、それでも不足する場合は骨造成が必要になります。
  3. 全身疾患の管理
    • 糖尿病など、歯周病やインプラント治療の成功に影響を与える全身疾患がある場合は、主治医と連携して、その疾患が良好にコントロールされていることが必須です。血糖値が高いままでは、インプラントが骨と結合しにくかったり、術後の感染リスクが高まったりするからです。

これらの準備をしっかりと行うことで、歯周病をお持ちの方でもオールオン4治療の成功率を高め、長期的な安定性を確保することが可能になります。重要なのは、経験豊富な歯科医師とよく相談し、ご自身の状態に合わせた最適な治療計画を立てることです。

オールオン4治療を長持ちさせるポイント

オールオン4治療は、多くの歯を失った方にとって画期的な解決策ですが、せっかく治療を受けたインプラントを長く快適に使い続けるためには、適切なメンテナンスと日々のケアが非常に重要です。特に、歯周病の既往がある方は、再発のリスクを低減するための努力が不可欠です。

オールオン4治療を長持ちさせるためのポイントは以下の通りです。

  • 毎日の徹底したセルフケア
    • オールオン4の人工歯は、通常のブリッジや入れ歯とは異なり、インプラントと繋がっていますが、その構造上、歯と歯茎の間に隙間ができやすく、食べカスやプラークが溜まりやすい傾向があります。
    • 歯ブラシだけでなく、タフトブラシ(先端が小さく、細かい部分を磨くのに適したブラシ)やスーパーフロス(フロスの一種で、太い部分が特徴)など、専用の清掃器具を効果的に使用することが非常に重要です。これらを使って、インプラントと人工歯の境目、人工歯の下の部分などを丁寧に清掃しましょう。
    • 歯科医師や歯科衛生士から、ご自身の口腔内に合った清掃方法や器具の選び方について指導を受け、実践することが大切です。
  • 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア
    • ご自身のセルフケアだけでは、どうしても取り除けないプラークや歯石があります。これらは、インプラント周囲炎の最大の原因となります。
    • 定期検診では、歯科医師や歯科衛生士が専門的な器具を用いて徹底的なクリーニングを行います。 また、インプラントの安定性、周囲の歯茎や骨の状態、噛み合わせのバランスなどを細かくチェックし、問題があれば早期に対処します。
    • 定期検診は、インプラント周囲炎の早期発見・早期治療につながり、インプラントを長持ちさせる上で最も重要な要素の一つです。
  • 噛み合わせの管理
    • オールオン4に過度な力がかかると、インプラント周囲の骨に負担がかかり、トラブルの原因となることがあります。
    • 歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、ナイトガード(マウスピース)の装着を検討するなど、インプラントへの負担を軽減する対策が必要です。定期検診で噛み合わせの調整を行うこともあります。
  • 生活習慣の改善
    • 禁煙: 喫煙はインプラント周囲炎のリスクを著しく高めます。禁煙は、インプラントだけでなく全身の健康維持にも繋がります。
    • 全身疾患の管理: 糖尿病などの全身疾患は、インプラント周囲炎の発症や進行に影響を与える可能性があります。主治医と連携し、疾患の管理を徹底しましょう。
    • バランスの取れた食生活: 硬すぎるものや粘着質の食べ物など、インプラントに過度な負担をかける可能性のある食品の摂取には注意が必要です。

これらのポイントを継続的に実践することで、オールオン4治療の恩恵を最大限に享受し、長期にわたる快適な口腔機能と美しい笑顔を維持できるでしょう。

まとめ

多くの歯を失った方にとって、オールオン4治療は画期的な選択肢ですが、「歯周病だからできない」と不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。確かに歯周病は、インプラントを支える骨を溶かしてしまうため、治療の成功に大きく影響します。口腔内に歯周病菌が多く存在すると、治療後にインプラント周囲炎を発症するリスクも高まります。

しかし、これは「絶対にオールオン4ができない」という意味ではありません。歯周病をお持ちの方がオールオン4治療を受けるためには、まず徹底的な歯周病治療を行い、口腔内の環境を改善することが不可欠です。さらに、インプラントを埋め込むのに十分な骨がない場合は、骨造成術などの処置が必要になることもあります。糖尿病などの全身疾患がある場合は、その管理も重要です。

せっかく治療を受けたオールオン4を長く快適に使い続けるためには、治療後のメンテナンスが非常に重要です。毎日の丁寧なセルフケア(適切な歯ブラシ、タフトブラシ、フロスの使用)はもちろんのこと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルクリーニングと検診は欠かせません噛み合わせの管理や、禁煙などの生活習慣の改善も、オールオン4の安定性に大きく寄与します。

歯周病の治療と適切なメンテナンスを継続することで、オールオン4治療の成功率を高め、長期にわたる快適な口腔機能と美しい笑顔を維持できるでしょう。

 



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。