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オールオン4の治療失敗やトラブルの事例は?

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2025.07.22

「全ての歯を失ってしまった、または残っている歯が少なく、総入れ歯以外の選択肢を考えている」という方にとって、オールオン4は非常に魅力的な治療法の一つです。わずか4本のインプラントで、片顎全ての歯を支えることができるオールオン4は、噛む機能の回復はもちろん、見た目の改善や生活の質の向上に大きく貢献します。しかし、どのような医療行為にも「絶対」はなく、オールオン4も例外ではありません。治療を検討する上で、期待する効果だけでなく、万が一のリスクや失敗例、起こり得るトラブルについても事前に知っておくことは非常に重要です。

オールオン4とは?

オールオン4(All-on-4)とは、失われた全ての歯、またはほとんどの歯を少数のインプラントで支える画期的な治療法です。通常、一本の歯をインプラントで補う場合は一本のインプラント体が必要になりますが、オールオン4では、顎の骨に埋め込むインプラント体を片顎につきわずか4本に限定し、その4本のインプラントで約1012本の人工歯が連結された一体型のブリッジを支えます。この「4本」という本数が、名前の由来にもなっています。

オールオン4の最大の特徴は、インプラントを埋め込む際に、骨の量が少ない部分を避け、骨の厚みがある部分に、斜めにインプラントを埋入するという技術にあります。これにより、通常では骨造成(骨を増やす手術)が必要となるような症例でも、骨造成をせずに治療が可能になる場合があります。骨造成が不要になることで、治療期間の短縮や患者様の身体的・経済的負担の軽減が期待できます。

この治療法は、主に以下のような方々に適応されます。

  • 全ての歯を失ってしまった方(無歯顎の方)
  • 残っている歯が少なく、抜歯が必要と診断された方
  • 現在の総入れ歯に不満があり、より安定した噛み心地を求めている方
  • 広範囲な骨造成手術を避けたい方

オールオン4の治療の大きな流れは、以下のようになります。

  1. 診断と治療計画: CTスキャンなどで顎の骨の状態を詳細に確認し、インプラントを埋め込む最適な位置や角度を決定します。
  2. インプラント埋入手術: 局所麻酔、または静脈内鎮静法を用いて、片顎につき4本のインプラント体を顎の骨に埋め込みます。この際、残っている歯は抜歯されることが多いです。
  3. 仮の歯の装着(即時荷重): 手術当日に、その4本のインプラントに連結された仮の歯(プロビジョナルレストレーション)を装着します。これにより、手術直後から見た目や食事が可能になります。ただし、仮歯での食事は、インプラントに過度な負担をかけないよう、柔らかいものに限定されることがほとんどです。
  4. 骨結合期間: インプラント体が顎の骨としっかりと結合するまで、数ヶ月間(3ヶ月~6ヶ月程度)待ちます。この期間は仮歯で過ごします。
  5. 最終的な歯の装着: 骨結合が確認された後、患者様の口腔内により適合し、耐久性にも優れた最終的な人工歯(ブリッジ)を作製し、仮歯と交換して装着します。

オールオン4は、従来のインプラント治療と比較して、手術回数や治療期間が短縮され、精神的・身体的負担を軽減できる可能性がある点が大きな魅力です。しかし、高度な技術と経験を要する治療法であるため、歯科医院選びが非常に重要になります。

治療で起こり得る失敗

オールオン4は非常に有効な治療法ですが、どのような医療行為にもリスクが伴います。期待される効果だけでなく、万が一のリスクや起こり得る失敗・トラブルの事例についても理解しておくことは、治療を受ける上で非常に重要です。

  1. インプラントと骨が結合しない(インプラント脱落): これはオールオン4だけでなく、一般的なインプラント治療における最も重大な失敗の一つです。インプラントを埋入しても、顎の骨としっかりと結合しないことがあります。
    • 原因: 手術時の初期固定の不足、骨の質や量の問題、喫煙、全身疾患(糖尿病など)、術後の感染、過度な早期荷重(仮歯での無理な食事)、口腔衛生状態の不良などが挙げられます。
    • 影響: インプラントが安定せず、最終的な歯を装着できません。場合によっては、インプラントを撤去し、期間を置いて骨造成などを行い、再治療が必要となることもあります。
  1. インプラント周囲炎: インプラント周囲炎は、インプラント版の歯周病とも言える病気です。インプラントの周りの歯茎や骨が細菌感染により炎症を起こし、進行するとインプラントを支える骨が溶けてしまいます。
    • 原因: 日常の不十分な口腔ケア、喫煙、糖尿病、定期的なメンテナンスの怠り、不適切な噛み合わせなどが挙げられます。オールオン4では連結された歯の清掃が複雑になるため、特に注意が必要です。
    • 影響: 歯茎の腫れや出血、膿、口臭などが生じ、最終的にはインプラントのぐらつきや脱落につながります。インプラント体そのものの除去と再治療が必要になることもあります。
  1. 神経損傷や血管損傷: インプラント手術は顎の骨の中にインプラント体を埋め込むため、稀に神経や血管を損傷するリスクがあります。
    • 原因: 事前の精密検査(CTなど)が不十分であったり、歯科医師の経験や技術が不足していたりする場合に起こりやすくなります。
    • 影響: 神経損傷の場合、唇や舌、顎のしびれ(麻痺)が起こることがあります。多くは一時的なものですが、重度の場合には永続的な知覚異常となる可能性もゼロではありません。血管損傷の場合、大量出血や術後の腫れが強く出ることがあります。
  1. 上部構造(人工歯のブリッジ)の破損や不具合: 最終的に装着される人工歯のブリッジ自体に問題が生じることもあります。
    • 原因: 強い食いしばりや歯ぎしり、噛み合わせの不適合、設計上の問題、素材の劣化などが考えられます。
    • 影響: 人工歯が欠けたり、割れたり、外れたりします。これにより、再作製や修理が必要となり、追加の費用や時間がかかることがあります。
  1. 審美性の不満: 機能的には問題がなくても、見た目の仕上がりに満足できないケースもあります。
    • 原因: 事前のシミュレーション不足、歯茎の形態との不調和、人工歯の色や形の選択ミスなどが挙げられます。
    • 影響: 笑った時の見た目や、発音などに影響が出て、患者様の満足度が低下します。

これらの失敗やトラブルを避けるためには、治療前の精密な診断と治療計画、歯科医師の技術と経験、そして患者様ご自身の適切な口腔ケアと定期的なメンテナンスが非常に重要です。

治療の失敗を避けるための注意点と防ぐ方法

オールオン4治療の失敗やトラブルを未然に防ぐためには、患者様ご自身の理解と協力、そして歯科医院選びが非常に重要です。ここでは、治療を成功に導くために特に注意すべき点と、具体的な予防策について解説します。

  1. 歯科医師と歯科医院の選択は慎重に: オールオン4は高度な技術と豊富な経験を要する治療です。歯科医師の技量によって治療の成否が大きく左右されます。
    • 十分な経験と実績: オールオン4の実績が豊富であるか、難症例への対応経験があるかを確認しましょう。症例数や治療期間、成功率などを具体的に提示できる歯科医院が望ましいです。
    • 精密な検査と診断: 治療前に歯科用CTスキャンを用いた詳細な骨の診断や、口腔内全体の検査を丁寧に行っているか確認してください。診断が不十分なまま治療を進める歯科医院は避けましょう。
    • 綿密な治療計画の説明: 治療の目的、具体的なステップ、期間、費用、リスク、術後のケアなどについて、患者様が理解できるよう分かりやすく説明してくれるかどうかが重要です。疑問点には納得がいくまで質問し、誠実に対応してくれる歯科医院を選びましょう。
    • 衛生管理体制: 手術を行うため、感染予防のための衛生管理が徹底されているかを確認することも大切です。
  1. 全身疾患や服薬情報は正確に伝える: 糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの全身疾患や、服用している薬がある場合は、必ず事前に歯科医師に正確に伝えてください。
    • 糖尿病: 血糖値のコントロールが悪いと、骨結合が阻害されたり、感染症のリスクが高まったりします。
    • 骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート系薬剤など): 顎の骨に影響を及ぼし、骨壊死のリスクを高める可能性があります。 これらの情報は治療計画に大きく影響するため、隠さずに伝えることが重要です。
  1. 喫煙習慣は改善する: 喫煙はインプラント治療の成功率を低下させる最大の要因の一つです。ニコチンが血管を収縮させ、血流を悪化させることで、骨結合を妨げたり、感染症のリスクを高めたりします。
    • 禁煙または節煙: 治療前だけでなく、治療中、そして治療後も可能な限り禁煙することが推奨されます。難しい場合は、本数を減らすなど、歯科医師と相談して対策を立てましょう。
  1. 治療中の口腔衛生管理を徹底する: 手術後の感染やインプラント周囲炎を防ぐために、日常の口腔ケアは非常に重要です。
    • 丁寧な歯磨き: 指示された方法で、優しく丁寧に歯と歯茎の境目を磨きましょう。
    • 補助清掃用具の活用: 歯間ブラシやデンタルフロス、専用の歯ブラシなど、歯科医師や歯科衛生士から指導された清掃用具を適切に使用してください。
    • 洗口液の利用: 殺菌成分を含む洗口液の使用を勧められた場合は、指示通りに使用しましょう。
  1. 術後の過度な早期荷重を避ける: オールオン4では手術当日に仮歯が入ることが多いですが、これはあくまで「仮の歯」であり、インプラント体が骨と完全に結合するまでは、過度な力をかけないように注意が必要です。
    • 食事制限の厳守: 歯科医師から指示された食事制限(柔らかいもの限定など)を必ず守ってください。無理に硬いものを噛むと、インプラントが骨と結合するのを妨げたり、脱落の原因となったりします。

これらの注意点を守り、歯科医師と二人三脚で治療を進めることが、オールオン4の成功と長期安定に繋がります。

治療の失敗やトラブルを防ぐには歯科医院選びと定期的なメンテナンス

オールオン4治療を成功させ、長期にわたって快適に使い続けるためには、患者様ご自身の努力ももちろん重要ですが、歯科医院選びと治療後の定期的なメンテナンスが最も重要な鍵となります。

歯科医院選びの重要性

オールオン4は、高度な外科手術と精密な補綴(被せ物)技術が融合した、専門性の高い治療です。そのため、歯科医院選びを誤ると、予期せぬトラブルや失敗に繋がるリスクが高まります。

  • 十分な経験と実績のある歯科医師がいるか: オールオン4の実績が豊富で、難症例への対応経験も持つ歯科医師を選ぶことが極めて重要です。過去の症例を提示できるか、学会での発表や専門医資格があるかなども判断材料になります。
  • 精密な検査と診断が行われているか: 歯科用CTスキャンを用いた詳細な骨の状態の診断や、口腔内全体の正確な検査は必須です。これらが不十分なまま治療を進める歯科医院は避けるべきです。
  • 明確な治療計画と説明があるか: 治療の目的、具体的なステップ、期間、費用、リスク、術後のケアなどについて、患者様が完全に理解できるよう、分かりやすく丁寧な説明をしてくれる歯科医院を選びましょう。疑問点には納得がいくまで質問し、誠実に対応してくれる姿勢が大切です。
  • 衛生管理体制が徹底されているか: 手術を伴う治療であるため、感染予防のための医療機器の滅菌や消毒など、厳格な衛生管理体制が整っているかを確認しましょう。
  • 保証制度やアフターケアが充実しているか: 万が一のトラブルに備え、治療後の保証制度や、長期的なメンテナンスプログラムが明確に提示されているかどうかも重要なポイントです。

定期的なメンテナンスの重要性

オールオン4の治療が成功し、最終的な歯が入ったからといって、それで終わりではありません。インプラントを長持ちさせるためには、治療後の定期的なメンテナンスが不可欠です。

  • インプラント周囲炎の予防: インプラント周囲炎は、インプラントが脱落する主要な原因の一つです。日常の歯磨きだけでは取り除けないプラークや歯石は、専門的なクリーニングで除去する必要があります。定期メンテナンスでは、歯科衛生士が専用の器具を用いて、連結された人工歯の複雑な構造の隅々まで徹底的に清掃します。
  • 噛み合わせのチェックと調整: 噛み合わせは時間の経過とともに変化することがあります。定期的に噛み合わせの状態をチェックし、必要に応じて調整することで、インプラントへの過度な負担を防ぎ、破損や緩みを予防します。
  • 早期発見・早期治療: インプラント周囲炎やその他の小さなトラブルは、初期段階では自覚症状がないことが多いです。定期的な検診により、わずかな変化も見逃さずに早期に発見し、適切な処置を行うことで、大きな問題に発展するのを防ぎます。
  • 口腔衛生指導の継続: ご自身の日常の口腔ケア方法についても、定期的に見直しや改善点のアドバイスを受けることができます。これにより、常に最良の口腔衛生状態を維持することが可能になります。

オールオン4は、失われた歯の機能と審美性を大きく改善し、生活の質を向上させる素晴らしい治療法です。しかし、その恩恵を最大限に受けるためには、信頼できる歯科医院を選び、治療後も継続してプロのサポートを受けることが何よりも重要だと言えるでしょう。

まとめ

オールオン4は、少数のインプラントで片顎全ての歯を支える画期的な治療法であり、失われた噛む機能や見た目を大きく改善し、生活の質を高める可能性を秘めています。しかし、どのような医療行為にもリスクは伴い、オールオン4も例外ではありません。

治療で起こり得る主な失敗やトラブルには、以下のようなものがあります。

  • インプラントと骨が結合しない(脱落): 術後の感染、喫煙、全身疾患などが原因となることがあります。
  • インプラント周囲炎: 不十分な口腔ケアやメンテナンスの怠りにより、インプラント周りの歯茎や骨が炎症を起こします。
  • 神経損傷や血管損傷: 手術時の偶発的な事故によるもので、麻痺や出血のリスクがあります。
  • 上部構造(人工歯のブリッジ)の破損や不具合: 噛み合わせの不適合や過度な力、素材の劣化が原因です。
  • 審美性の不満: 期待通りの見た目にならなかった場合です。

これらの失敗やトラブルを避けるためには、治療を受ける患者様ご自身が以下の点に注意し、予防に努めることが重要です。

  • 歯科医師と歯科医院を慎重に選ぶ: 十分な経験と実績、精密な検査、丁寧な説明、そして徹底した衛生管理が行われているかを確認しましょう。
  • 全身疾患や服薬情報を正確に伝える: 治療計画に影響するため、隠さずにすべてを伝えましょう。
  • 喫煙習慣は改善する: 喫煙はインプラントの成功率を大きく下げる要因です。
  • 治療中の口腔衛生管理を徹底する: 指示された方法で丁寧なケアを続けましょう。
  • 術後の過度な早期荷重を避ける: 仮歯での食事制限などを必ず守りましょう。

そして何よりも、信頼できる歯科医院を選び、治療後も定期的なメンテナンスを継続することが、オールオン4を成功させ、長く快適に使い続けるための最も重要なポイントです。定期的なクリーニングと検診により、インプラント周囲炎などのリスクを早期に発見・対処し、健康な状態を維持していくことができます。

オールオン4は、多くのメリットを持つ素晴らしい治療法です。ご自身の口腔状態や治療への不安について、まずは歯科医師に相談し、納得のいく形で治療を進めていきましょう。

 



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。