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セメントリテイン主流からスクリューリテイン主流への変遷  

ブログ

2025.04.25

 本日のブログは患者様向けというよりは同業者の先生、特に卒後間もない先生方向けに上記題名にてブログを書いてみようと思います。今回の内容は私の主観が大きく占めてしまうことはご了承ください。また、間違い等があれば遠慮なく指摘して頂けましたら幸いです。

 

 インプラントの上部構造の固定様式には大きく分けてセメントリテインとスクリューリテインの2種類があります。
 私がインプラント治療に携わり始めたのは2010年ですが、当時はセメントリテインがまだ主流だったように思われます。というのも、おそらく上部構造がメタルボンドクラウンが主流だったからなのではないかと思います。ちなみにいわゆるAll on 4(+1or2)の上部構造は当時はスクリューリテインとチタンフレームのハイブリッドセラミックが主流だったように思います。
 当時主流であったのはチタンのアバットメントの上にメタルボンドクラウンを製作、そしてそれを口腔内でセメントで装着するセメントリテインの様式でした。アバットメントとクラウンの適合を調整することによってセメントレス、もしくはほんの少量の仮着材等で装着して着脱を可能にするいわゆるフリクションシステムも当時は多くの先生が行われていたように記憶しています。
 セメントリテインはある程度の埋入方向のブレを是正することができますので、単冠、連結ともに審美、精度の質の担保を行うことができます。例えば前歯では唇側や切縁方向の埋入だったとしても唇面にアクセスホールが見えたりしないですし、連結の埋入で多少並行性が取れていなくてもアバットメント同士は平行に作製でき、上部構造製作が可能となります。またセメントスペースが存在することで多少の精度の誤差を修正することが可能なのです。
 ちなみにメタルボンドクラウンをスクリューリテインにすると、咬合接触部位においてはホールの辺縁の陶材がチップするリスクがあります。かつ、現在のようにホールを審美的に封鎖することが難しいので、ホールの位置が目立ってしまうという欠点もあります。 

 

 2015年~2017年頃より金属代の高騰、ジルコニアというマテリアルの進化、そしてセメント残留による周囲炎の論文の発表などにより情勢は一変します。以前は、ジルコニアという素材は色調や適合、そして強度などの課題があったのですが、それらを克服し、且つ従来よりも短期間、低価格での提供が可能になり、ジルコニアはインプラントの上部構造の主流になりました。おそらく現在の上部構造の様式の主流はチタンベースのアバットメントにアクセスホールを設けたジルコニアクラウンをラボサイドで接着してスクリューリテインとしたものではないでしょうか?もちろん他にも色々な様式がありますが、この様式が主流となっているのは現在のところ一番費用(時間)対効果が高いからではないかと思っております。ジルコニアの場合は仮着材装着やセメントレスでは脱離のリスクが高いため、現在のところはアバットメントと合着して、装着、着脱が可能なようにスクリューリテインが主流となっております。着脱が可能、容易ということは臨床的には当然有意であり、セメントが残留することもありません。ちなみに一部のメーカーではフリクションシステムのようなものもあるようですが、価格を考えると現在はまだ広く使用はされなそうです。

 

 今後どんな様式の上部構造が主流になっていくのかは分かりません。チタンベースアバットメント、ジルコニアクラウン、スクリューリテインの費用(時間)対効果を超える様式、新たなマテリアルが登場してくるかどうか。ただ時代の変化は恐ろしいもので、数年後には違う様式が主流になっていることはよくあることです。歯科医師として、時代の流れとともに様々な治療を経験できるということは、とても幸せなことだと思います。


 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。