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インプラント治療後、グラグラする。痛みを感じる

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2025.06.15

インプラント治療を終え、快適な食生活を取り戻したと思っていた矢先に、「インプラントがグラグラする」「痛みを感じる」といった症状が現れたら、それは非常に不安なことでしょう。せっかく時間と費用をかけて治療したインプラントに、一体何が起こっているのか、心配でたまらない方もいらっしゃるかもしれません。このような症状は、決して放置して良いものではなく、原因を早期に特定し、適切な処置を行うことが非常に重要です。この記事では、インプラント治療後にグラグラしたり痛みを感じたりする主な原因と、それぞれの状況に応じた対処法についてご案内いたします。

インプラント治療後。グラグラしたり痛みを感じる原因は?

インプラント治療後にインプラントがグラグラしたり、痛みを感じたりする原因はいくつか考えられます。最も一般的な原因の一つは、インプラント周囲炎と呼ばれる、インプラントを支える骨や歯茎の炎症です。これは、天然歯における歯周病とよく似た病態で、プラーク(歯垢)が原因で細菌感染が起こり、インプラント周囲の骨が溶けてしまうことで、インプラントが不安定になることがあります。

その他にも、以下のような原因が考えられます。

  • 過度な噛み合わせの力: インプラントに強い力が継続的にかかりすぎると、インプラントを支える骨に負担がかかり、炎症や骨吸収を引き起こすことがあります。特に、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は注意が必要です。
  • インプラント本体や上部構造の破損: ごく稀ですが、インプラント本体や、その上に装着されている人工の歯(上部構造)が破損している可能性も考えられます。衝撃や強い力が加わった場合に起こり得ます。
  • 初期のインプラントの結合不全(オッセオインテグレーション不全): 治療後早期にグラつきや痛みを感じる場合、インプラントと顎の骨が十分に結合していない(オッセオインテグレーション不全)可能性があります。これは、骨の状態や手術時の問題など、様々な要因で起こることがあります。
  • 神経への圧迫: 手術の際に、インプラントが神経に近接して埋入された場合、神経を圧迫して痛みや痺れの原因となることがあります。

これらの症状が現れた場合は、自己判断せずに、速やかに歯科医院を受診することが最も重要です。早期に原因を特定し、適切な処置を行うことで、インプラントを長持ちさせられる可能性が高まります。

インプラント周囲炎の進行

インプラント周囲炎は、インプラントを失う最大の原因の一つであり、その進行は段階的に起こります。

  • インプラント周囲粘膜炎(初期段階)
    • 症状: インプラント周囲の歯茎が赤く腫れたり、触ると出血しやすくなったりします。この段階では、まだインプラントを支える骨の吸収は見られません。
    • 原因: 主にプラーク(細菌の塊)の蓄積が原因で、適切なブラッシングが行われていない場合に発生しやすいです。
    • 特徴: 適切な口腔ケアや専門家によるクリーニングで改善が見込めます。この段階で早期に発見し、対処することが非常に重要です。
  • インプラント周囲炎(進行段階)
    • 症状: 歯茎の炎症がさらに悪化し、インプラント周囲の骨が溶け始めます。進行すると、インプラントがグラグラする、膿が出る、強い痛みを感じるといった症状が現れます。
    • 原因: インプラント周囲粘膜炎が進行し、細菌感染が骨にまで及んだ状態です。喫煙習慣や糖尿病などの全身疾患、不適切な噛み合わせなどもリスクを高めます。
    • 特徴: 骨が一度溶けてしまうと、自然に元に戻ることはありません。外科的な処置が必要になる場合や、最悪の場合、インプラントを撤去せざるを得なくなることもあります。

インプラント周囲炎は、初期段階では自覚症状が少ないこともあり、気づかないうちに進行してしまうことがあります。そのため、定期的な歯科検診とメンテナンスが不可欠となります。わずかな変化でも見逃さず、早期に対処することが、インプラントを長持ちさせるための鍵です。

インプラント周囲炎の対応方法

インプラント周囲炎の兆候が見られた場合、その進行度合いに応じて適切な対応が必要です。早期に発見し、適切な処置を行うことが、インプラントを救うための鍵となります。

  • 初期段階(インプラント周囲粘膜炎)の対応
    • 徹底した口腔清掃指導: 歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなどを用いて、インプラント周囲のプラークを徹底的に除去する方法を再確認します。
    • 専門家によるクリーニング: 歯科医院で、歯科医師や歯科衛生士が専用の器具を用いて、通常のブラッシングでは除去しきれないプラークや歯石をきれいに除去します。
    • 抗菌剤の使用: 炎症が強い場合には、局所的に抗菌剤を塗布したり、内服薬を処方したりすることがあります。
  • 進行段階(インプラント周囲炎)の対応
    • 非外科的処置: 歯周ポケット内のプラークや歯石を除去し、インプラント表面を清掃します。レーザー治療や薬液を用いた洗浄も行われることがあります。
    • 外科的処置: 骨の吸収が進んでしまった場合、歯茎を切開してインプラント周囲の感染組織を除去し、骨の再生を促す処置(骨造成術)を行うことがあります。場合によっては、インプラントを撤去せざるを得ないケースもあります。
    • 噛み合わせの調整: 不適切な噛み合わせが原因でインプラントに過度な負担がかかっている場合は、噛み合わせの調整を行います。

いずれの段階においても、患者様ご自身の毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠です。一度炎症が起こってしまうと、再発のリスクも高まるため、長期的な視点での管理が非常に重要になります。

 

インプラント周囲炎にならないために

インプラントを長持ちさせ、快適な状態を維持するためには、インプラント周囲炎を未然に防ぐことが最も重要です。以下の点に注意し、日々のケアと定期的な検診を怠らないようにしましょう。

  • 毎日の丁寧なセルフケア
    • 正しいブラッシング: 歯科医師や歯科衛生士から指導されたブラッシング方法で、インプラント周囲のプラークを徹底的に除去しましょう。特に、インプラントと歯茎の境目は汚れが残りやすいので、意識して磨くことが大切です。
    • 歯間ブラシやデンタルフロスの活用: 歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間やインプラントの隙間の汚れは、歯間ブラシやデンタルフロスを使って丁寧に清掃しましょう。インプラントの種類によっては、専用の清掃器具が必要な場合もあります。
    • 洗口液の利用: 殺菌効果のある洗口液を併用することで、口腔内の細菌を減らし、炎症のリスクを低減することができます。
  • 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア
    • プラーク・歯石除去: どんなに丁寧にブラッシングしても、完全にプラークや歯石を除去することは難しいです。歯科医院では、専門的な器具を使って、普段のケアでは取り除けない汚れを徹底的にクリーニングします。
    • インプラントの状態チェック: 定期検診では、インプラントの安定性や周囲の歯茎、骨の状態をレントゲンなどで確認し、問題がないかをチェックします。早期に異常を発見できれば、より簡単な処置で対応できる可能性が高まります。
    • 噛み合わせの確認: 噛み合わせの変化はインプラントに過度な負担をかける原因となることがあります。定期的に噛み合わせの状態を確認し、必要に応じて調整を行います。
  • 生活習慣の改善
    • 禁煙: 喫煙はインプラント周囲炎のリスクを大幅に高めます。インプラント治療をされた方は、禁煙することをおすすめします。
    • 全身疾患の管理: 糖尿病など、歯周病に影響を与える全身疾患がある場合は、主治医と連携しながら適切な管理を継続しましょう。
    • バランスの取れた食生活: 栄養バランスの取れた食事は、全身の健康だけでなく、口腔内の健康維持にも繋がります。

これらの予防策を継続することで、インプラントを長期間にわたって安定して使用し、快適な生活を送ることができます。

まとめ

インプラント治療後に「グラグラする」「痛みを感じる」といった症状が現れると、不安になるのは当然のことです。これらの症状の主な原因は、インプラント周囲炎という天然歯の歯周病に似た炎症ですが、その他にも噛み合わせの問題やインプラントの破損、初期の結合不全などが考えられます。

インプラント周囲炎は、初期段階の「インプラント周囲粘膜炎」であれば適切な口腔ケアと専門的なクリーニングで改善が見込めますが、進行するとインプラントを支える骨が溶け、最悪の場合はインプラントを撤去せざるを得なくなります。

インプラントを長持ちさせるためには、日々の丁寧なセルフケアと歯科医院での定期的な検診が非常に重要です。正しいブラッシング方法の実践、歯間ブラシやデンタルフロスの活用、そして定期的なプラーク・歯石除去や噛み合わせのチェックを怠らないようにしましょう。喫煙習慣や全身疾患の管理も、インプラント周囲炎の予防には不可欠です。

もし、インプラントに異常を感じたら、決して自己判断せずに、速やかに歯科医院を受診してください。早期発見・早期対応が、インプラントを長期間にわたって安定して使用するための鍵となります。



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。