大宮銀座通り歯科オフィシャルサイト

ご予約・お問い合わせ
048-783-2696
ARCHIVE

インプラントの平均寿命

ブログ

2025.08.23

インプラント治療を検討されている方の多くが、「インプラントはどのくらい長持ちするのだろう?」という疑問をお持ちではないでしょうか。せっかく時間も費用もかけて治療を受けるのですから、できるだけ長く快適に使いたいと考えるのは当然のことです。インプラントの「寿命」と聞くと、漠然としたイメージしか持てないかもしれませんが、実はその期間には様々な要因が関係しています。このページでは、インプラントの平均的な寿命について詳しく解説するとともに、その寿命を左右する要因や、ご自身のインプラントをより長く良好な状態に保つための具体的な方法についてもご紹介します。

 

インプラントの平均寿命はどのくらい?

インプラントの平均寿命は、様々な研究や統計から10年から15年と言われることが多いです。しかし、これはあくまで「平均」であり、実際にはもっと長く、20年、30年と問題なく機能しているインプラントも少なくありませんインプラントの寿命は、天然の歯が持つ寿命と同様に、患者様一人ひとりの口腔内の状態、生活習慣、そして日々のメンテナンスの状況によって大きく変動します。

天然の歯が、虫歯や歯周病、外傷などによって失われるように、インプラントも時間の経過とともに様々な影響を受けます。インプラントは、埋め込まれたチタン製の人工歯根と、その上に装着される人工歯(上部構造)から構成されています。この人工歯根が顎の骨としっかりと結合し、安定していることがインプラントが長く機能するための最も重要な条件です。

インプラント治療が確立されてから、その材料や術式は飛躍的に進化してきました。現在使用されているインプラント体は、生体との親和性が非常に高いチタン製であり、骨との結合(オッセオインテグレーション)も安定して得られるようになっています。そのため、適切に治療が行われ、その後のケアがしっかりしていれば、インプラントは非常に長持ちする治療法と言えるでしょう。

ただし、インプラントの寿命を考える上で大切なのは、単に「どれくらいの期間使えるか」だけでなく、「どれくらいの期間、快適に使えるか」という質の問題も含まれるということです。長く快適にインプラントをお使いいただくためには、患者様ご自身の努力と、歯科医院での継続的なサポートが不可欠です。

 

寿命を短くしてしまう原因

インプラントの寿命は、様々な要因によって短くなってしまう可能性があります。これらの原因を理解し、適切に対処することが、インプラントを長持ちさせる上で非常に重要です。

インプラントの寿命を短くする主な原因

  1. インプラント周囲炎:
    • 概要: インプラント周囲炎は、インプラントの周囲の歯ぐきや骨が炎症を起こす病気で、天然歯の歯周病に似ています。進行すると、インプラントを支える骨が溶けてしまい、最終的にはインプラントが抜け落ちる原因となります。
    • 原因: 主に、毎日の歯磨きが不十分でプラーク(歯垢)が蓄積すること、喫煙、糖尿病などの全身疾患、噛み合わせの不調和などが挙げられます。
    • 対策: 毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが不可欠です。
  2. 噛み合わせの不調和・過度な力:
    • 概要: インプラントに過度な力が加わると、インプラント体や上部構造(人工歯)に負担がかかり、破損や脱落の原因となることがあります。
    • 原因: 治療後の噛み合わせの調整が不十分な場合や、歯ぎしり、食いしばりなどの癖がある場合に起こりやすくなります。
    • 対策: 定期検診で噛み合わせをチェックし、必要に応じて調整を行うことが重要です。歯ぎしりや食いしばりの癖がある方には、ナイトガード(マウスピース)の装着をお勧めすることもあります。
  3. 喫煙:
    • 概要: 喫煙は、インプラントの成功率を低下させ、寿命を短くする大きなリスク要因です。
    • 原因: タバコに含まれるニコチンやタールが血流を悪化させ、骨の再生を妨げたり、免疫力を低下させたりすることで、インプラント周囲炎のリスクを高めます。
    • 対策: インプラント治療を検討中の方、すでにインプラントをお使いの方は、禁煙または喫煙本数を減らすことを強くお勧めします。
  4. 全身疾患の影響:
    • 概要: 糖尿病や骨粗しょう症など、一部の全身疾患はインプラントの寿命に影響を与えることがあります。
    • 原因: 糖尿病は免疫力を低下させ、インプラント周囲炎のリスクを高めます。骨粗しょう症は骨の質に影響を与える可能性があります。
    • 対策: 全身疾患をお持ちの方は、主治医と連携しながら、病状を適切にコントロールすることが重要です。
  5. 不適切なメンテナンス:
    • 概要: 歯科医院での定期的なメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎の早期発見・早期治療が遅れ、寿命が短くなる原因となります。
    • 原因: 患者様ご自身でのケアだけでは取り除けないプラークや歯石が蓄積するためです。
    • 対策: 歯科医院での定期検診とプロフェッショナルクリーニングを継続して受けることが、インプラントを長く維持するために不可欠です。

これらの原因を理解し、日々の生活の中で意識して対策を講じることで、インプラントをより長く、快適にお使いいただくことが可能になります。

 

寿命を伸ばす方法

インプラントの寿命を最大限に延ばし、長く快適にお使いいただくためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらは、日々の心がけと歯科医院での定期的なケアが中心となります。

インプラントの寿命を伸ばすための具体的な方法

  1. 徹底した毎日のセルフケア:
    • 正しい歯磨き: インプラントの周囲には、天然歯と同様にプラーク(歯垢)が付着します。歯科医師や歯科衛生士から指導された正しいブラッシング方法で、毎日丁寧に磨くことが重要です。特に、インプラントと歯ぐきの境目は汚れがたまりやすいので、意識して磨きましょう。
    • 補助清掃具の活用: 歯ブラシだけでは届きにくい場所の汚れを除去するために、歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどを活用しましょう。これらの使用方法についても、歯科医院で指導を受けることをお勧めします。
  2. 歯科医院での定期的なプロフェッショナルケア:
    • 定期検診の受診: 最低でも3ヶ月〜半年に一度は歯科医院で定期検診を受けましょう。インプラント周囲炎は、初期段階では自覚症状がほとんどないため、専門家によるチェックが不可欠です。
    • プロフェッショナルクリーニング: ご自身では落としきれないプラークや歯石は、歯科医院での専用の器具を使ったクリーニングで除去します。これにより、インプラント周囲炎の予防につながります。
    • 噛み合わせのチェックと調整: インプラントに過度な負担がかかっていないか、噛み合わせのバランスが崩れていないかを定期的に確認し、必要に応じて調整を行います。
  3. 生活習慣の見直し:
    • 禁煙: 喫煙はインプラント周囲炎の最大の危険因子の一つです。インプラントを長持ちさせるためには、できる限り禁煙することをお勧めします。
    • 食生活の注意: 硬すぎるものや粘着性の高い食べ物は、インプラントや人工歯に過度な負担をかける可能性があります。バランスの取れた食生活を心がけましょう。
    • 歯ぎしり・食いしばりへの対応: 睡眠中の歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、インプラントに強い力がかかることで寿命を縮める原因になります。ナイトガード(マウスピース)を装着することで、負担を軽減できます。
  4. 全身疾患の適切な管理:
    • 糖尿病や骨粗しょう症など、インプラントの予後に影響を与える可能性のある全身疾患をお持ちの方は、主治医と連携し、病状を適切に管理することが重要です。

これらの対策を継続して行うことで、インプラントをより長く、健康な状態でお使いいただけます。インプラントは「一生もの」ではありませんが、「ご自身の努力とプロのサポート」によって、限りなくそれに近い状態を目指すことが可能です。

 

寿命を迎えた場合にすること

どんなに丁寧にケアをしていても、残念ながらインプラントがその「寿命」を迎えることもあります。しかし、インプラントの寿命とは、必ずしもインプラント体(人工歯根)が使えなくなることを意味するわけではありません。多くの場合、上部構造(人工の歯)の破損や、インプラント周囲炎の進行など、何らかのトラブルによって機能しなくなるケースがほとんどです。

インプラントが寿命を迎えたと考えられる兆候

  • 人工歯のぐらつきや脱落: 上部構造を固定しているネジが緩んだり、人工歯自体が破損したりすることで、ぐらついたり、完全に外れてしまったりすることがあります。
  • インプラント体のぐらつき: まれに、インプラント体と顎の骨の結合が失われ、インプラント体自体がぐらつくことがあります。これはインプラント周囲炎の末期症状であることも多いです。
  • 歯ぐきの腫れや出血: 慢性的なインプラント周囲炎が進行している場合、インプラント周囲の歯ぐきが赤く腫れたり、出血したりすることがあります。
  • 強い痛み: 通常、インプラントは痛みが少ないですが、感染や問題が生じると痛みを伴うことがあります。

寿命を迎えたインプラントの対処法

インプラントに何らかのトラブルが発生し、寿命を迎えたと思われる場合は、自己判断せずに、まずは速やかに歯科医院を受診することが最も重要です。

  1. 精密な診断: 歯科医師が、口腔内検査、レントゲン写真、歯科用CTなどを活用し、インプラントの状態を詳しく調べます。何が原因で問題が起きているのかを正確に診断することが、次のステップに進むための第一歩です。
  2. 原因に応じた治療の検討:
    • 上部構造(人工歯)の問題の場合: 人工歯の破損やネジの緩みであれば、人工歯の修理や交換、ネジの締め直しなどで対応できることが多いです。インプラント体自体に問題がなければ、比較的簡単な処置で回復が可能です。
    • インプラント周囲炎の場合: 初期段階であれば、専門的なクリーニングや薬での治療、外科的な処置によって改善を目指します。しかし、骨の吸収が大きく進行してしまっている場合は、インプラント体の撤去が必要になることもあります。
    • インプラント体の撤去: インプラント体が骨と結合せず動揺している、または重度のインプラント周囲炎で骨が大きく失われた場合は、インプラント体を撤去することになります。撤去後は、状態に応じて骨の再生を待ったり、再度インプラント治療を行うか、他の治療法(ブリッジや入れ歯など)を検討したりします。
  3. 再治療の選択肢: インプラントを撤去した後でも、顎の骨の状態が許せば、再度インプラント治療を行うことも可能です。その際には、前回の失敗の原因を究明し、より慎重な治療計画を立てることが重要になります。また、ブリッジや入れ歯など、他の治療法を検討することもできます。

インプラントは、適切なケアを継続することで長く機能させられる可能性が高いですが、万が一トラブルが発生した場合でも、慌てずに専門家である歯科医師に相談し、適切な処置を受けることが大切です。



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。