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歯を失った場合の選択肢

ブログ

2025.10.23

歯を失ってお悩みの方へ

虫歯や歯周病、または外傷などにより歯を失ってしまったとき、「見た目が気になる」「うまく噛めない」「治療法がたくさんあって、どれを選べばいいかわからない」といった様々な不安を抱えることになります。歯がない状態を放置してしまうと、残された歯や顎の骨、さらには全身の健康にまで悪影響を及ぼす可能性があるため、できるだけ早く、適切な治療法を選ぶことが非常に重要です。インプラント、入れ歯、ブリッジなど、歯を補うための治療法はそれぞれに特徴があり、メリットとデメリットが存在します。最適な治療法は、失った歯の本数や位置、患者様のお口の状態、ライフスタイル、そしてご予算によって一人ひとり異なります。ここでは、後悔のない選択をしていただくために、まず知っておくべき「歯がない状態を放置するリスク」と「代表的な治療法の基礎知識」について、情報を整理しお届けします。

歯が抜けた・ない状態を放置するリスク

歯を失った箇所がある方へ

「奥歯だから見えないし、まあいいか」「とりあえずは困っていないから」と、歯が抜けた状態を放置してしまう方は少なくありません。しかし、失った歯を補わずにそのままにしておくと、その部分だけでなく、お口全体のバランス全身の健康にまで深刻な影響が及びます。歯がない状態が引き起こす具体的なリスクは、以下の通りです。

歯がない状態を放置することによる主なリスク

リスクのカテゴリ

具体的な影響

残りの歯への影響

歯並びの乱れ: 空いたスペースに隣の歯が倒れ込んできたり、噛み合っていた上の歯(または下の歯)が伸びてきたりします。これにより、噛み合わせのバランスが崩れ、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

顎の骨への影響

顎の骨の吸収: 歯の根(歯根)から伝わる刺激がないため、顎の骨(歯槽骨)が痩せていきます。骨が痩せると、将来的にインプラント治療が難しくなったり、入れ歯が合わなくなったりする原因になります。

口腔機能への影響

咀嚼能力の低下: 噛む力が弱くなり、食べ物を十分にすり潰せなくなります。これにより、胃腸への負担が増加します。また、しっかり噛めないことで、食事の楽しみが減り、栄養摂取にも偏りが出やすくなります。

見た目・発音への影響

顔の印象の変化: 特に前歯がない場合だけでなく、奥歯が抜けている場合でも、頬がこけたり、口元にシワが増えたりして、老けた印象を与えることがあります。また、空隙から空気が漏れることで発音にも影響が出ます。

これらの悪影響は、時間が経つほどに進行し、治療も複雑で大規模になりがちです。歯を失ってしまった場合は、これらのリスクを避けるためにも、できるだけ早い段階で専門家に相談し、適切な処置を受けることがご自身の健康を守るための賢明な選択です。

歯がない場合の代表的な3つの治療例(ブリッジ・入れ歯・インプラント)

失った歯を補う治療法を比較検討されている方へ

歯を失った場合、その機能を回復するための代表的な治療法は、「ブリッジ(Bridge)」「入れ歯(義歯)」「インプラント(Implant)」の3つです。それぞれの治療法は、治療の仕組み、費用、治療期間、そして健康な歯への影響が大きく異なります。ご自身に最適な治療を選ぶために、それぞれの基本的な特徴を理解しておきましょう。

治療法

仕組み

メリット

デメリット

ブリッジ (Bridge)

失った歯の両隣の歯を削り、橋渡しをするように人工の歯を被せる。取り外しは不要。

治療期間が短い。保険適用内の選択肢がある。固定式で安定感がある。

健康な歯を削る必要がある。土台となる歯に負担がかかる。失った歯の本数や位置によっては適用できない。

入れ歯(義歯)

取り外し可能な装置で、人工の歯と歯茎を粘膜に乗せて使用する。バネ(クラスプ)で残っている歯に固定するものが多い。

外科的な処置が不要。費用が比較的安価(保険適用の場合)。広範囲の欠損に対応できる。

違和感や異物感がある。噛む力が弱い。毎日の手入れが必要。バネが残っている歯に負担をかける。

インプラント (Implant)

顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する。

天然の歯とほぼ同じ噛む力を再現できる。他の歯を削ったり負担をかけたりしない。見た目が自然。

外科手術が必要。治療期間が長い。自由診療で費用が高額。骨の状態によっては治療できない場合がある。

どの治療法にも一長一短があり、「これが絶対的に一番良い」という治療法はありません。例えば、ブリッジは手軽ですが、土台の歯を削る行為は元に戻せません。入れ歯は安価ですが、異物感や噛む力の弱さが生活に影響します。インプラントは優れていますが、手術や費用、治療期間が必要です。治療を選ぶ際は、単に費用や期間だけでなく、「将来的な残存歯への影響」や「噛む力の回復度」を総合的に考慮することが、後悔しないための重要なポイントとなります。

奥歯がない場合の治療法は?

奥歯を失って噛むことに不便を感じている方へ

前歯を失った場合は見た目の問題が大きいのに対し、奥歯を失った場合は、主に「噛む機能」への影響が問題となります。奥歯は食べ物をすり潰すという重要な役割を担っており、特に強く噛む力がかかるため、治療法を選ぶ際には、強度と安定性が非常に重要になります。

奥歯を失った場合の選択肢は、基本的に「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」の3つですが、奥歯の位置や残っている歯の状態によって、その適応性が変わってきます。

奥歯を失った場合の治療法の選択肢と注意点

治療法

奥歯での適応性

特に注意すべき点

ブリッジ

【条件あり】 失った歯が12本で、かつ欠損部の両側に十分な強度のある歯が残っている場合に限られます。奥歯は噛む力が強いため、土台の歯に過度な負担がかからないかが重要です。

最も奥の歯(最後臼歯)を失った場合は、支えとなる隣の歯がないため、ブリッジは適用できません

部分入れ歯

【広く適用可能】 歯の本数に関わらず、広く適用されます。保険適用のものであれば安価ですが、多くの場合、金属のバネを残りの歯にかけて固定します。

噛む力が弱く、硬いものが噛みにくいことがあります。バネがかかる歯に負担をかけたり、食べ物が挟まりやすかったりするため、残りの歯の健康管理が非常に重要になります。

インプラント

【最も推奨されることが多い】 顎の骨にしっかりと固定されるため、奥歯に必要な強い噛む力を天然歯に近いレベルで回復できます。他の健康な歯に負担を一切かけません。

外科手術が必要なこと、費用が高額なことがデメリットです。また、長期間放置して顎の骨が痩せている場合は、骨造成などの処置が必要になることがあります。

奥歯を失った状態で放置すると、先述の通り、噛み合わせのバランスが大きく崩れ、肩こりや頭痛といった全身の不調につながることもあります。噛む機能の回復を最優先に考えるのであれば、安定性と強度に優れるインプラントが有力な選択肢となりますが、ご自身の全身疾患や骨の状態、ご予算を考慮し、歯科医師とよく相談して決定することが大切です。

1本も歯がない人の治療法は?

すべての歯を失ってしまった方へ

虫歯や歯周病が進行し、上顎または下顎、あるいは上下すべての歯を失ってしまった場合、残存する歯を土台とするブリッジは適用できず、治療法は主に総入れ歯インプラントを用いた方法に絞られます。失った歯の本数が多いからこそ、噛む力の回復や生活の質の向上(QOL)に大きく影響するため、慎重に治療法を選ぶ必要があります。

すべての歯を失った場合の主な治療法

治療法

特徴

メリット

デメリット

総入れ歯(総義歯)

歯ぐき全体を覆う床(しょう)と呼ばれるピンク色の部分と人工歯で構成された取り外し式の装置。

外科的な手術が不要。治療期間が比較的短い。保険適用のものであれば費用を抑えられる。

噛む力が天然歯の2030%程度と弱い。口の中で動きやすく、食べ物が挟まったり外れたりしやすい。異物感が大きい。

インプラントオーバーデンチャー

顎の骨に数本(通常24本)のインプラントを埋め込み、それを土台として入れ歯を固定する治療法。取り外しは可能。

総入れ歯よりも安定性が格段に向上し、外れにくい。噛む力が改善する。インプラントの本数が少ないため、総インプラントよりも費用を抑えられる。

外科手術が必要。インプラント部分の費用が発生する。定期的なメンテナンスが必要。

オールオン4/ (All-on-4/6) など

顎の骨に4本または6本のインプラントを特殊な角度で埋め込み、その日のうちに固定式の人工歯を装着する治療法。取り外しは不可。

ほとんど総天然歯に近い安定した噛む力を回復できる。見た目が非常に自然で美しい。手術当日に仮歯が入ることが多く、比較的早く噛める。

高度な外科技術が必要。自由診療で費用が非常に高額。

すべての歯を失っている場合、顎の骨は歯根からの刺激がなくなり、大きく痩せてしまっていることが多いです。総入れ歯の場合はこの痩せた骨の上に吸着させて維持しますが、インプラント治療の場合は、痩せた骨の状態を事前に正確に診断し、骨造成などの処置が必要になるかどうかも検討する必要があります。安定した噛み合わせを取り戻すことが、全身の健康維持にも繋がるため、治療のゴールを明確にして選択することが大切です。

まとめ

歯の治療で後悔したくない方へ

歯を失った際の治療法は、単に失われた歯を補うというだけでなく、残っている健康な歯をいかに守るか、そして将来的な生活の質(QOL)をどう高めるかという視点から選ぶことが非常に重要です。ブリッジ、入れ歯、インプラントといった治療法には、それぞれに独自のメリットとデメリットがあり、どの方法が最適かは、患者様のお口の状態、失った歯の本数や位置、ご予算、そして何よりも「何を最も重視するか」によって異なります。

治療法選択における重要ポイント

考慮すべき要素

治療法ごとの影響

残存歯への影響

ブリッジや入れ歯は、残っている健康な歯に負担をかけますが、インプラントは他の歯への影響が最小限です。将来的に多くの歯を残したいなら、インプラントが有力な選択肢となります。

噛む力の回復

総入れ歯では回復力が低いですが、インプラントやオールオン4/6は天然歯に近い噛む力を回復できます。食事の楽しみを重視する方は、インプラント系の治療を検討しましょう。

外科的処置の有無

入れ歯やブリッジは外科処置が不要ですが、インプラントは手術が必要です。全身疾患などにより手術が難しい場合は、入れ歯が選択肢となります。

顎の骨の維持

インプラントは人工歯根が刺激を与えることで顎の骨の吸収を防ぎますが、入れ歯やブリッジでは骨の吸収が進んでしまいます。

歯を失った状態を放置することは、お口全体の崩壊へと繋がるリスクがあります。まずはご自身の現状を正確に把握し、各治療法の特性を理解した上で、どのような未来の口腔環境を目指したいのかを明確にすることが大切です。治療法を決める前に、必ず複数の選択肢について歯科医師とじっくり話し合い、ご自身にとって最適な「一生ものの選択」を見つけてください。

 



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。