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インプラントとフッ素の関係性

ブログ

2025.09.03

インプラント治療を終えられた皆様へ

インプラント治療は、失った歯の機能を回復させ、快適な食生活を取り戻すための優れた治療法です。しかし、インプラントは「治療が完了したら終わり」というわけではありません。インプラントを長持ちさせ、健康な状態を維持するためには、日々のセルフケアと歯科医院での専門的なケアが不可欠です。特に、歯周病や虫歯を予防するフッ素の役割について疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。インプラントを長持ちさせるための日常のケア方法や、フッ素とインプラントの関係性をお伝えいたします。

インプラントを長く保つためのポイント

インプラントを長く、快適にお使いいただくためには、いくつかの重要なポイントがあります。インプラント自体は虫歯になることはありませんが、周囲の歯茎や骨は天然の歯と同様に、歯周病にかかるリスクがあります。このインプラントの周囲に起こる炎症を「インプラント周囲炎」と呼びます。インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支えているあごの骨が溶けてしまい、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。そのため、インプラント周囲炎を予防することが、インプラントを長持ちさせる上で最も重要なポイントとなります。具体的には、以下の二つのケアが不可欠です。

  • 毎日の丁寧なセルフケア: 毎食後の丁寧な歯磨きはもちろんのこと、歯間ブラシやデンタルフロスなどを活用して、インプラントと天然歯の間、インプラントと歯茎の境目などを丁寧に清掃することが大切です。
  • 定期的な歯科医院でのメンテナンス: ご自宅でのケアだけでは、どうしても磨き残しが出てしまいます。定期的に歯科医院にお越しいただき、歯科衛生士による専門的なクリーニングを受けることで、セルフケアでは除去しきれない歯垢や歯石を取り除くことができます。

これらのケアを継続することで、インプラント周囲炎を未然に防ぎ、インプラントの寿命を延ばすことができるのです。

フッ素ケアが治療後の口腔健康を保つ?

インプラントを長持ちさせるためには、天然の歯と同様に口腔内を清潔に保つことが不可欠です。フッ素は、天然の歯においては歯質の強化再石灰化の促進といった効果があり、虫歯予防に非常に有効な成分として知られています。では、人工物であるインプラントにもフッ素は有効なのでしょうか?

結論から申し上げますと、インプラント自体にフッ素の効果はありませんインプラントはチタンなどの金属でできており、フッ素の主な効果である歯質の再石灰化は起こらないためです。しかし、インプラント治療をされた方も、お口の中にはご自身の天然の歯が残っていることがほとんどです。フッ素は、その残っている天然の歯を虫歯から守るために非常に有効です。

インプラントを失う原因の多くは、インプラント周囲炎という歯周病の一種です。インプラント周囲炎は、天然の歯周病と同じく、歯周病菌によって引き起こされます。インプラント周囲炎を予防するには、プラークコントロール(歯垢の除去)が最も重要であり、フッ素には直接的な効果はありません。しかし、フッ素によって天然の歯が健康な状態に保たれることで、お口全体の健康が向上し、結果としてインプラント周囲炎のリスクを間接的に下げることができると考えられます。

市販のフッ素製品は使っても良い?

インプラント治療をされた方が、市販のフッ素配合歯磨き粉やフッ素洗口液を使用しても良いかというご質問をよくお受けします。結論から言えば、市販のフッ素製品を使っていただいて問題ありません

フッ素は、天然の歯の虫歯予防には非常に効果的です。インプラントはお口の中に残る天然の歯を守るために、ご自身の歯が何本か残っている場合がほとんどです。インプラント周囲炎のリスクを避けるためにも、残された天然の歯を健康に保つことは非常に重要です。そのため、市販のフッ素入り歯磨き粉やフッ素洗口液を日々のケアに取り入れることを推奨しています。

フッ素製品を選ぶ際のポイントとしては、研磨剤の少ないものを選ぶことをお勧めします。研磨剤が多く含まれている歯磨き粉は、インプラントの被せ物や、インプラントを支える歯茎に摩擦を与え、傷をつけてしまう可能性があります。傷がつくと、そこに細菌が入り込みやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが高まることがあるからです。

また、ご自宅でのセルフケアだけでなく、歯科医院での定期的なメンテナンスも重要です。歯科医院では、ご自身では除去しきれない歯垢や歯石を専門的な器具で除去し、インプラントや天然の歯を長持ちさせるためのケアを行います。

歯科医師が勧める日常のケアの方法

インプラントを長持ちさせるためには、日々のセルフケアが最も大切です。歯科医師が推奨する日常のケア方法をいくつかご紹介します。

  • 歯ブラシ: 歯ブラシは、インプラント周囲の歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)や、インプラントと隣り合う歯の間を丁寧に磨くことが重要です。歯周ポケットを磨く際には、歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当て、小刻みに動かして汚れをかき出す「バス法」が有効です。また、ヘッドが小さく、毛先が細い歯ブラシを選ぶことで、お口の奥まで届きやすくなり、磨き残しを減らすことができます。
  • 歯間ブラシ・デンタルフロス: インプラントと隣の歯との間には、歯ブラシだけでは届きにくい隙間があります。この隙間に溜まった歯垢を放置すると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。そこで、歯間ブラシやデンタルフロスを併用することが非常に効果的です。歯間ブラシはサイズがいくつかあるので、ご自身の歯と歯の隙間に合ったサイズを選びましょう。デンタルフロスは、特にインプラントと被せ物の間の狭い隙間の清掃に適しています。
  • フッ素入り歯磨き粉・洗口液: インプラントそのものにはフッ素の効果はありませんが、残っている天然の歯を虫歯から守るために、フッ素入りの歯磨き粉や洗口液を積極的にご使用ください。前述したように、研磨剤が少ない製品を選ぶことが、インプラントや被せ物を傷つけないためのポイントです。

これらのケアを毎日欠かさず行うことで、お口の中を清潔に保ち、インプラントを健康な状態に維持することができます。

 



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 認定医、日本口腔インプラント学会 専門医、日本顎顔面インプラント学会 専門医、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。