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インプラントと私・続「ティッシュレベル(TL)とボーンレベル(BL)」

ブログ

2021.09.21

さて、今回のテーマは「TLとBL」についてです。あらかじめ断りを入れておきますが利益相反はなく、また特定の思想に傾倒させようという意図もありません。「ふーんこういう考え方もあるんだなー」くらいの感じで聞いてもらって構いません。ただ、特別オリジナルのとかではなく、ごくごく一般にありふれた昔からの考え方で、ご存じの方にとっては特別新しい知見はないかもしれません。

インプラントはアバットメントとの接続部分に機械研磨面があるティッシュレベル(TL)と機械研磨面がないまたはほとんどないボーンレベル(BL)の二種類に分かれます。

この話題をさせて頂こうと思ったのは、最近巷に出ている症例などを拝見してるとTLが使用されることが少なくなってきた気がしたからです。さらに最近は完全にTLを否定される先生もいらっしゃるようです。私より若い先生はTLをそもそも使用されたことがない方も多いかと思います。またそもそもTLがラインナップにないメーカーも多いです。そしてTLがラインナップにあるメーカーすらもあまりTLを推さなくなってきている感もあります。古いインプラントみたいなイメージもあるのかもしれません。

確かにTLは少しクセがあるため慣れないと使いづらく、使える症例が限られる(基本的には臼歯部の少数歯欠損…ですかね)ので、とりあえずBLを選んでおけば間違いない、みたいなところはあります。業者や他の先生に勧められてオールマイティなBLを補綴パーツとセットでいくつか購入して…TL?…良く分からないけど使用するとなるとまたパーツも買わなきゃだし…みたいな方もいらっしゃるかもしれないですね。 
しかし、いまだにTLは多くの先生方に使用され続けています。そんなに使いやすいわけではないのに。流行ではないし、インスタ映えもしないのに(笑)。なぜでしょうか?

一言で簡単にまとめると「長期に渡ってトラブルが起きにくいと認識され、絶大な信頼を得ているから」だと私は思っています。特に多数の症例を長年積み重ねてきてTL、BLをどちらも使用されてきた先生はそれを体感していらっしゃいます。巷に症例として出てくることが少ないだけで、TLの出荷数というのは未だに多く、実はインプラントの症例数が昔からとても多い施設が結局TLを多く使用していたりします。そしてそれはメーカーや色々なしがらみに忖度なしに選択をした結果だと思います、多分(笑)。
とある最大手メーカーのTLのインプラントなどはもう40年以上ほとんど形を変えずに、今現在も多数使用されていますが、これは本当に凄いことだと思います。インプラントメーカーは利益を追求しなければいけないので、次々に新しい製品、ラインナップを開発し、古く使われなくなった製品は製造を中止していきます。その度に確かに改良されていったりはするのですが、その反面医療者側にはコストがかかってしまったり、患者側にも今まで使用していた部品、材料などがなくなってしまったりして、いいことばかりではありません。そんな中、長年使用され続けている製品というのはエビデンス云々よりとても信用があると思っています。

私もインプラント治療を始めてまだ10年ちょっとなので、自分の治療の経過をそこまで長期で追えていませんが、それでも色々な経験をしました。自分自身の治療はもちろん、他の先生の治療のトラブルケース、経過不良なケースもそれなりに見てきました。インプラントの治療におけるトラブルというのはある程度数を経験した先生なら誰でも少なからず経験することだと思いますし、避けられない場合もあります。そして高額な自由診療であること、人体に与えるダメージが比較的強いことなどから、そのトラブルは患者側にとってはもちろん、私達医療者側にとっても恐怖となります。それゆえ私自身は「私、失敗しないので」ではなく「私、もう絶対失敗したくないので」という気持ちで常に治療を行っています。10000本治療したら10000本が患者様の口腔内で問題なく生涯機能し続けてほしい、と本気で思っています。なので一番重視しているのは流行でもなく、写真写りやレントゲン等の見た目の美しさではなく(それも大事ですが)、もちろんコスト面でもなく、患者様に実際にもたらす結果、そしてそれに伴う長期に渡る自分の信用です。そういう意味でインプラント治療を始めた当初から、症例を選びながらTLを使用しています。ただそれでも今まで使用したインプラントは実はBLの方が多く、TLを使用したのは3~4割くらいだと思います。

断っておきますが、ももでん先生も私も別にTL推しというわけではなく、状況によって選んで使用しているだけです。そして無理に皆様に使い分けを勧めるわけではありません。使い分けをするとなるとどうしてもコストがかかると思いますし、補綴パーツの種類も違うので、管理が手間になることもあるかもしれません。ただ、間違いなくそれを上回るメリットがあること、そして使い分けをされない先生にもこの考え方をぜひ知って頂きたいと思い、今回セミナーを開催させて頂くに至りました。ドクターによってもちろん考え方は違いますし、症例によっても変わってくるので一概に「TLとBLの使い分け」の定義付けはできないのですが、少しでも皆様の今後の臨床の参考になれば幸いです。また、インプラント治療が未経験の先生でも理解できるような内容に努めますので、多くの方にご視聴頂ければ幸いです。至らぬところも多々あると思いますが、何卒よろしくお願い申し上げます。



 
監修記事
小川 信Ogawa Shin
医療法人社団 新成会 理事長。歯科医師。日本口腔外科学会 口腔外科認定医、日本口腔インプラント学会 所属、日本顎顔面インプラント学会 所属、厚生労働省指定臨床研修指導歯科医として、多岐にわたるインプラント治療を行う。新潟大学医歯学総合病院の口腔外科やインプラント治療部門で長く研究や臨床に携わっており、「患者さんができるだけ長い間、QOLが高い状態で過ごせるよう、そのライフスタイルに寄り添った歯科治療を提供したい」という想いで、日々の治療にあたっている。